人は見かけに……
最初に申し上げておくが、これは図書館とは特に関係のない話であります。
しかしながらそこには重要な教訓が暗示されているのでここに記す次第です(こじつけ)。
先日ちょっと手続きすることがあって市役所に行ったのだけれど、車を降りて歩きながらバッグの中を確認したところ、必要な書類を置いてきてしまったことが発覚。
まずい。
どーしよう、家に取りに戻るしかないか、でもそれだとやたら時間がかかるし……などと道端で立ち止まりしばし黙考。
すると向こうから、短いパンチパーマ、ほとんど無いに等しいような眉、するどい眼光を放つ小さな目、派手な服装という誰でも一目で「その筋の人」と分かりそうな男がややガニ股歩きで近づいてきた。
歩きタバコぷかぷかしながら、である。
まずい。
これはひじょーにまずい。
ぜぇったいに目を合わせてはいけないパターンである。
突然また歩き出したら意識しているのが見え見えだし、このまま何気なく通り過ぎてもらうのを待つことにしよう、そうしよう。
などと瞬時に考えていたところ、その男が左手に持っていた小さな袋状のものをパカッと開き、右手に持っていたタバコの灰をその中に落としているのが視界の端の方に入った。
おー、これは携帯用の灰皿ではないか、意外や意外、その筋の人っぽいのに(というと語弊があるかもしれないけど)けっこうマナーがいいようで。
もっとも歩きタバコ自体があかん、と言われればその通りなんでしょうけど。
で、そんなちょっと意外な様子に、ついそれを目で追ってしまい、結局すぐそこまで近づいて来たところで見事に目を合わせてしまった!!
まままずい!
ひじょーにひじょーにまずい。
目じりがピクリと動いた(ような気がする)ぞ!
表情が厳しくなった(ような気がする)ぞ!
ど、どうする、このままスルーしていいのか、どうなんだ、などとちょいとパニクって思考停止になった瞬間、司書教諭の口がこんなことを言ってしまっていた。
「マナー、いいですね」
な、何言ってんだ、自分!!
無意識に言葉が出てしまったではないか!
まままままままずすぎる、これは間違いなく怒らせたろうな、しかもよりによって「ですね」の「で」がほとんど聞こえないくらい小さくて「いいっすね」になってしまったではないか、まるでその筋の舎弟が「兄貴、これいいっすね」とか馴れ馴れしく言っているようなもんじゃないか、これは「てめぇふざけんな」といったセリフとともに顔面に拳が飛んでくるパターンじゃないか、いやいやもしかしたら懐からスッと拳銃とか出してくるんじゃないのか、まてまて右手にタバコ左手に携帯灰皿だ、両手がふさがっているのだから手をだしてはこないだろう、いやいやタバコを持っているということはもしかしたらそれを押しつけてグリグリされるんじゃないか、熱いぞ熱いぞ、というか、そこらに停めてあるカーフィルムが貼られて外から見られなくしてある車に連れ込まれてあんなことやこんなことをされるんじゃないか、どどどどーする……。
(ここまでの妄想にかかった時間、0.2秒)
すると、絶望を全身に纏ってパニくる男(=司書教諭)を横目に、その筋の人っぽい男が一言。
「だろっ?」(ニカッ)
ニヒルに笑ってスタスタと行ってしまった。
完全に固まってしまった石化男(=司書教諭)は再び思考を停止し、冷や汗が気化していくことだけを理解するのであった。
結局10分以上そのまま固まり続け(主観的時間である、客観的時間だとおそらく数秒)、げっそりして家路に着く。
当初予定していた手続きは、当然、出来ていない。
さて、おかげさまで司書教諭、今日も無事生きながらえて仕事をまっとうしております。
このエピソードに内包されている暗示は、人は時として思いもよらぬ言動をしてしまうものである、人生はなるようにしかならない、ということ(そうなのか?)。
もう一つ言えば、人は見かけによらない、信ずる者は救われる、ということであります(こじつけ)。
とはいえ、見かけを無視して軽口を叩いた結果ぼこぼこにされても、司書教諭は責任とれませんのでご注意ください。
あ、それとこの話はネタですので、かなり誇張されております。
そのまま受け取らないでいただけれるとありがたいです。
どれくらい誇張しているか、というと、まぁ1~2割くらいですかね……(自虐)。