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2009年4月23日 (木)

『猫を抱いて象と泳ぐ』

先日「本屋大賞」のことを書いていて、あ~あれを紹介したいな、と思い出したのがこの本。
というのも、作者の小川洋子は数年前『博士の愛した数式』で栄えある第一回の本屋大賞を受賞しているので。
で、この『猫を抱いて象と泳ぐ』は小川洋子の最新作になります。

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若き天才チェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの一生を描いた作品で、物語は静かに淡々と進んでいきます。
波瀾万丈の物語を期待する中高生には受け入れがたいのかな……。
でもとにかく文章が美しくって、その言葉の羅列を見るだけでため息が出てしまいます。

チェスの対戦場面も多いのですが、たとえルールを知らなくてもその叙述の巧みさに引き込まれ、何となくわかったような気で読んでしまう。
物語が進行する中で主人公の胸に積もっていく、人々や動物や建物や言葉などの心象がどれをとっても愛しさに満ちていて、心にしみてきます。
心の中のどんよりしたものが、ぱぁっと出て行ってくれる感じです。
(そんなにお前の心は汚れていたのか、というようなツッコミはしないこと!)

本屋大賞をとった『博士の~』もたしかに良かったのですが、個人的にはこれは小川洋子の一番だなぁという感想。

何となく気分がすぐれなくて、心のカタルシスを得たい人には特にオススメですね。