続・なんちゃって
前回「なんちゃって」の続き。
「なんちゃて、なんちゃって」は果たして二重否定と成りうるかという極めて重大な疑問を解決する余裕もなく、再び事態は急変するのであった。
最初の「なんちゃって」はいつの間にか書かれてしまったのであるが、今日はでかい声では1・2を争う問題生徒がやってきて、堂々ともう一つ「なんちゃって」を書き加えていきやがった!
何てこった!
許せんヤツだ!
これで「~入室を禁ずる、なんちゃって、なんちゃって、なんちゃって」という三重否定になってしまったではないか。
入室を禁じないことはないこともない、ということになって、要するに「禁じない」ことになるな。
えーい、めんどくさい!
もっともどうせまた書かれるだろうなとは予想はしていたが。
ここでもう一つ「なんちゃって」を書いて四重否定にしようかとも思ったが、こりゃキリがないな。
ここは別の手を考えなくては……。
そうだ!
後から書き加えた内容はすべて無効にしてしまえば良いのだ!
ということで書き加えたぞ。
「印刷活字の部分のみ有効!」
どうだ!
これで最初の印刷部分「~入室を禁ずる」のみが有効となり、後から手書きで書き加えた「なんちゃって~」は無効となるのである。
勝ったな。
と、浮かれていたらまた冷たい高校生の声が聞こえてくる。
「先生、それは決定的な矛盾があると思いますけど」
「何だ何だ、いつも冷静沈着な司書教諭の先生がこんなことでカッカするなんて人格と行動が矛盾しているとでも言いたいのか?」
「いえ、人格と合致していると思うのでそれは矛盾していません」
「……で、ではいかにも達筆そうな司書教諭の字が意外と汚いので矛盾しているとでもいうのか?」
「いえ、それも見た目の通りなので矛盾しているわけではありません」
「えーい、それじゃー何だっつーの!」
「『印刷活字のみ有効』ってことは、先生が手書きで書いたその言葉自体も無効ということじゃないんですか?」
「げ」
負けたな。