2009年11月 9日 (月)

『ニッポンの犬』

先日こちらに「犬が好き」という話を記したところ、犬を飼っているのかといろんな生徒に聞かれたのだが、実は……、飼っていない(泣)。
昔から飼いたい気持ちは強かったのだが、いろいろ問題もあり未だに飼えていない。
しかし、可愛かった息子も反抗期の扉を開けようとしており(すでに開け放たれているかも)、一緒に遊んでくれなくなりそうな今日この頃。
そろそろ犬をお迎えする決断の時期かもしれない。
「ペットに逃げるようになったらおしまいよ」などと言われたりもするが、聞く耳もたぬ。
逃げまくっちゃいます。

さて、図書室には動物や昆虫などの写真集も置いてある。
報道写真集のように問題意識を喚起させるものもあるが、動物の写真集というのは、もうこれはとにかく「癒し」のため。
で、今回は特にオススメの犬の写真集をご紹介(ついでに猫も)。

20091109  

これこれ、岩合光昭の『ニッポンの犬』である。
ついでに『ニッポンの猫』もご一緒に。

岩合光昭氏は動物写真家としてすっごく有名で多くの写真集を出しているが、お気に入りは何といってもこれ。
表紙のシバちゃんの写真をご覧あれ。
シバに桜に富士山!
あぁ、日本に生まれて良かったぁ……などと、めったに思わないことに感動して涙さえこぼれてきそうである。
外国産の方が好きな方はあまりお気に召さないのかもしれないけど。

しかし、実は岩合氏、猫の写真集の方が圧倒的に多いんですね。
まぁ猫も嫌いじゃないけど、もちっとワンの方にも力を入れていただきたい……。

いずれにせよ、このように「癒し」もありますので、勉強に疲れたら図書室までお出かけくだされ。
(暗に疲れるほど勉強しなさいという意が含まれているな。)

2009年6月22日 (月)

『この本、おもしろいよ! 』

20090622a

岩波ジュニア新書が創刊30年記念ということで、岩波さんはちょっと盛り上がっている。
中高生が読むにはちょうど良い内容なので、本校でもジュニア新書はすべて定期購入している。
せっかくだから便乗して何かジュニア新書を紹介しようと思いついたはいいが、いかんせん数が多すぎて絞れない。
いっそのこと「本の紹介」をテーマにした本を紹介しよう(ややこしいな)、という気になって選んだのが『この本、おもしろいよ!』である。

それにしても何と直截的なタイトルだろう。
まずそのセンスに脱帽である。
まぁ、それはそれとして、この本では各界の著名人がとっておきのお薦め本をエッセイで紹介していく。
何と言っても岩波だから、けっこうお堅い内容かと思ったのだが、これがどうしてどうして、けっこうバラエティに富んでいて、読み物としてもおもしろい。
あさのあつこ,香山リカ,明川哲也,川嶋あい,五嶋龍,豊島ミホ,中江有里……などなど、いろんな観点から紹介してくれる。
「ライトノベル読書ガイド」まであるじゃないか!
おっと、先日も取り上げた本校の卒業生、梅沢由香里さんも登場、推薦本を紹介しているぞ。

20090622b

梅沢さんは荻原規子の『空色勾玉』をまず紹介している。
15歳の少女が主人公で、古代を舞台にしたファンタジー。
同じシリーズで『白鳥異伝』『薄紅天女』や『西の善き魔女』なんかも人気作ですね。

梅沢さん以外にも、皆さん個性的な推薦書案内をしてくれる。
「先生~、何を読んでいいか分からない~」と言ってくる生徒はよくいるが、まずこれを読んで探してみなさい!

2009年6月 3日 (水)

『マイ・ブルー・ヘブン』

20090603

「東京バンドワゴン」シリーズの4作目、というか番外編。
最近発刊されたばかりなのでこれを紹介するのだけれど、まずは本編である前3作を読んでほしいところ。
『東京バンドワゴン』『シー・ラブズ・ユー』『スタンド・バイ・ミー』です。
もちろん、すべて図書室にあり。

東京、下町の古本屋「東京バンドワゴン」を舞台に、ひと癖もふた癖もある面々が、一つ屋根の下泣いて笑って朝から晩まで大騒ぎするホームドラマの決定版!
登場する大家族の人々は、それぞれ個性的で魅力的。
ちょっとライトミステリー的味付けもして、笑って泣いて楽しめます。
いやぁ「LOVEだねぇ~」

昔テレビで人気を博した「寺内貫太郎一家」を彷彿させるおもしろさ(中高生には分からんかなぁ)。
これもテレビドラマにしたらいいと思うのだけれど、何でどの局もやらないのだろう?
登場人物の配役を自分で選んでみるというのもおもしろいかも。
やっぱり「LOVEだねぇ~」

おっと、肝心のこの作品の話をしてなかった。
今回の『マイ・ブルー・ヘブン』は、東京バンドワゴンの当主、勘一とサチの出会いを描く、戦後間もない日本を舞台にしたハードボイルドっぽい(ちょっとだけね)ストーリー。
ここから読んでもおもしろいけど、やはり本編を読んでからの方が楽しめるでしょう。

「LOVEだねぇ~」っていうのが何かは、読んでみれば分かります!
いやぁ、やっぱり家族っていいもんですねぇ(泣)。

2009年5月20日 (水)

『叶恭子の 知のジュエリー12ヶ月』

タイトルを見ただけでは、なんだなんだなんだ、叶恭子? ジュエリー? 学校図書館に置く本か?
と疑問に思った方もいらっしゃるかも。
でも、これは思春期を迎えた子どもたちを対象にした、理論社の「よりみちパン!セ」シリーズの一冊で、悩み多き女の子へ贈る真っ当な書物。

正直あの叶恭子の本ということで、どんな写真が載っているのかとワクワクしながら、もとい、不安に駆られながら見てみたわけだが、写真など一切なし、誕生石の本か? と訝しく思ったが、そんなこともなし、驚愕の女子中高生向けアドバイス集であった。
うーん、びっくりだ。

20090520

もちろん、テレビでもおなじみのゴージャスワールドの先入観を持って読むことになるのだが、その一つ一つの言葉はいたってシンプルで真摯。
この人、ただのイロモノではないな、とちょっと見方が変わりました。
ホントに全部彼女の言葉なの、と疑う向きもあるかもしれないけど、まぁどっちにしてもこれだけ読ませてくれるならどうでもいいかな、という感じ。
人生経験豊富な、酸いも甘いも噛み分ける人でないとなかなか書けない哲学書。
オススメです。

例えば「自信とコンプレックス」と題したこんな文章。

わたくしもつねに、
自信とコンプレックスのはざまにいます。
けれども、それは他人と自分とを
比較することで生じるものではなく、
自分の中の理想との関係によるものでしかありません。

お姉さま、あなたはすごい人だ。
……と、物事を相対的にしか見れず、コンプレックスの塊と化している男は思うのであった。

2009年5月 8日 (金)

はじめての文学

作家の名前は聞いたことあるけど、何を読んでいいかわからない、という話をけっこう耳にする。
図書室まで来て「何読んだらいいのー」とすがってくる人も……いる。
そういう人にオススメしたいのが「はじめての文学」というシリーズ。
現代文学を代表する作家十二名が、自作の中から「とりあえず、これから」と選び抜いた中短編のアンソロジー。
若い読者が対象ということでたいへん読みやすい編集になっており、中学生でも楽に読める。

20090508

シリーズは以下の十二名で構成。
よしもとばなな/村上龍/村上春樹/浅田次郎/宮部みゆき/宮本輝
重松清/小川洋子/川上弘美/林真理子/山田詠美/桐野夏生

どこかで聞いたことのある作家ばかり……でしょう?
一人も聞いたことのない、という人は、面倒なので端から読んでみよう!
きっと自分のお気に入りの作家が見つかるハズ!
たぶん。

2009年5月 2日 (土)

『プレッシャーに負けない』

20090502_2

昨年末に刊行された梅沢由香里さんの『プレッシャーに負けない』をご紹介。
著者の梅沢さんは本校の卒業生です。

梅沢さんは日本囲碁界有数の知名度を誇る女流棋士。
漫画「ヒカルの碁」の監修を務めたりしました。
テレビ番組やCMの出演なども数多く、その姿はテレビでよく見かけられます。
今年2月には女流棋聖3連覇を達成し、実力的にもトップレベルです。
本校としても、誇るべき卒業生の一人ですね。
ちなみにJリーグジュビロ磐田のゴールキーパーと結婚されています(これは余計なことですかね)。

彼女は中学時代からプロを目指したものの、プレッシャーに弱く7年間で14回もプロ試験に落ち続けたそうです。
そんな自分を振り返りながら、プレッシャーに負けず、乗り越えていくヒントを与えてくれています。
中学生でも読みやすいので、プレッシャーを感じている人はすぐにでも手にしてみよう!

もちろん、プレッシャーに押しつぶされ毎日泣きながら仕事をしている私がすでに読んだことは言うまでもない。

2009年5月 1日 (金)

『日本文学者変態論』

20090501

爆笑問題の「日本史原論」のシリーズはそれぞれ面白かったと思いますが、これはその最新刊。
雑誌『ダ・ヴィンチ』連載中から注目しており、書籍化されたら紹介しようとは思っていたのですが、タイトルがタイトルだけに女子校のオススメ本として公に出すのはいかがなものかと、ちょいと躊躇です。
でもここで言う「変態」は「普通の状態と違うこと、異常なこと」を意味するものであって、それ以上に妄想をふくらまして考え込まないようにしましょう!

24人の日本文学者を取り上げ、田中が説明、太田がボケ、田中がツッコムという繰り返しで、その人となりを紹介していきます。
まぁ漫才と見ればそれほど面白いというわけでもないと思うのですが、どうも堅苦しくて敬遠しがちな近代文学者を分かりやすく理解できるという点では高評価。
近代文学史学習の入り口として、特に受験生のあなた、ぜひご一読を。

しかし作家というのは、ホントめちゃくちゃな人が多いねぇ。

2009年4月23日 (木)

『猫を抱いて象と泳ぐ』

先日「本屋大賞」のことを書いていて、あ~あれを紹介したいな、と思い出したのがこの本。
というのも、作者の小川洋子は数年前『博士の愛した数式』で栄えある第一回の本屋大賞を受賞しているので。
で、この『猫を抱いて象と泳ぐ』は小川洋子の最新作になります。

20090423_3

若き天才チェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの一生を描いた作品で、物語は静かに淡々と進んでいきます。
波瀾万丈の物語を期待する中高生には受け入れがたいのかな……。
でもとにかく文章が美しくって、その言葉の羅列を見るだけでため息が出てしまいます。

チェスの対戦場面も多いのですが、たとえルールを知らなくてもその叙述の巧みさに引き込まれ、何となくわかったような気で読んでしまう。
物語が進行する中で主人公の胸に積もっていく、人々や動物や建物や言葉などの心象がどれをとっても愛しさに満ちていて、心にしみてきます。
心の中のどんよりしたものが、ぱぁっと出て行ってくれる感じです。
(そんなにお前の心は汚れていたのか、というようなツッコミはしないこと!)

本屋大賞をとった『博士の~』もたしかに良かったのですが、個人的にはこれは小川洋子の一番だなぁという感想。

何となく気分がすぐれなくて、心のカタルシスを得たい人には特にオススメですね。

2009年4月20日 (月)

『死者の学園祭』

20090420_2 

ご存じの方も多いかと思いますが、3月に角川書店から「角川つばさ文庫」が創刊されました。
ウチでも今学期に入ってから貸し出しを開始しました。
この手のこども向け文庫(サイズは新書)としては、講談社の「青い鳥文庫」のシリーズがよく知られていると思いますが、角川さんもがんばってくれると期待しています。

基本的には小学校中・高学年(作品によって変わる)からどうぞ、というコンセプトなので、まぁ中学生にはむしろ簡単ということになりますが、読みやすいので皆結構好きなんですよね。
読書に親しむという面ではそれもいいかな、と。
ここからいわゆる「YA向け」、そしてさらに一般書籍と、読む本も成長していってもらわないとちょっと困りますけどね。
ウチでも、中学生でも読むに堪えるものは購入していきたいと思います。

さて、今回特に取り上げたいのは、その「つばさ文庫」の最初のラインアップ、赤川次郎の『死者の学園祭』。
この作品が最初に刊行されたのは1983年なので、今からなんと26年前!
ということで、中学生だとご両親くらいの世代の方がよくご存じかも?
でも、決してそんな古さは感じられません。

実は赤川次郎の本は、以前ウチの図書室でもよく読まれていたのだけれど、最近あまり借りられなくなってきました。
認知度が低いせいかなぁと思っていたところに、今回の「つばさ文庫」化。
これをきっかけに、また赤川マニアが増殖することを期待したいところです。

2009年4月18日 (土)

本屋大賞

20090417

さて、最初にどんな本を取り上げようかとちょっと悩んだのですが、先日(4月6日)大賞が発表されたばかりというタイムリーな理由により、「本屋大賞」の作品をご紹介。
本屋大賞は全国の書店員さんが選ぶという賞で、これにノミネートされる作品というのは確かにあまり「ハズレ」がなく面白いので、生徒たちにもよく勧めています。

さて、今年度の大賞は湊かなえの『告白』でした。
受賞のニュースを聞いて、いやぁ、なるほどなー、という感じでした。
内容が衝撃的で話題性があり、物語としても読み応えがある『告白』はいい意味でも悪い意味でも他とは違う色を出していたので……。
新人ではありましたが、評価が高かったですねー。

ただ、確かにミステリーとしてはとても面白いのですが、これを中高生の皆さんにお勧めするというのは、ちょっと腰が引けるところもあるんですね。
わが子を亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である2人の少年を自ら裁くというえぐいストーリー。
これはちょっと問題あるのでは、と疑問に思う箇所もチラホラ。
とりあえず、読んでスッキリしたい人、ほのぼの幸福感に浸りたい人にはオススメしません。
かなりダークな部分を含んだミステリーですし、読後感は人によってかなり異なってくるでしょう。
読む人は心の準備体操(?)を念入りにしてからお読みください。

ちなみに今回のノミネート作で個人的に推したい他の作品は、
『ジョーカー・ゲーム』(柳広司)~かっこいいです。スパイ物でアレルギーある人も多いと思うけれど、それでも面白く読めます。
『のぼうの城』(和田竜)~時代小説なのでこれもアレルギーあるかもしれない……。けれどもとても読みやすく、楽しめます。
『ボックス!』(百田尚樹)~高校ボクシング部が舞台なので、これもやはり女子は手を出しにくいかぁ。しかしコテコテの青春小説で読みやすく面白いです。
『新世界より』(貴志祐介)~日本SF大賞を受賞した、長大な物語。でもよく考えられていて、引き込まれます。

うーん、こう見てみると、女子中高生対象を前提とすると何かアレルギー要素を含んだものばかりだなぁ。
それでも読んでみると面白いと思うのだけれど……。
あと、『流星の絆』(東野圭吾)もノミネートされていましたが、これはもう言うまでもないという感じ。
ウチの図書室でもとてもよく借りられていますしね。

とにかく、ノミネート作は全部図書室に置いてあります。ぜひご一読を。
ついでに去年、一昨年、その前……の本屋大賞受賞作、ノミネート作も併せて読んでみましょう!
(図書室に全部あります)